珍しく夕暮れ前に帰ってきたかと思えば、酷い泣きっ面だった。
特にカナダに至ってはボロボロ大泣きし、アメリカは膨れながら必死で涙を堪えているという様子だ。

「おかえり」

けれど叱ったり怒るにしてもその泣きっ面が余りに可愛すぎて、イギリスにはそんなことできやしなかった。
代わりに涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながらも、頑張って家路について門限を守ってくれたことを称えておかえりの一言を言ってやる。
ただいま、と小さな返事が返ってきたのでもうそれだけで満足だった。
それから、とてとてと小さな四本の足が洗面台に向かって行った。
泣きっ面の原因といえば、恐らく喧嘩でもしたのだろう。そう思いながら、戸棚から二個のドロップ缶を出す。
戻ってきた二人はそのドロップ缶を見ながら「わあ!」と声をあげた。

「メロンが食べたい!」
「……いちごが、食べたいです」

さっきまでの涙を吹き飛ばしてアメリカが言うと、カナダもおろおろしながら続いて言う。
「またメロンといちごか」
微笑みながらイギリスは二個のドロップ缶を手に、二人の身長に合わせて屈んだ。
「ほら、手を出してごらん。お前らは良い子だから、きっと望どおりのものが出てくるはずだ」
まず、素早く右手を差し出したアメリカに缶を振って一つ、ドロップをその小さな手に落としてやる。
出てきたのは透き通った黄緑色のメロン味だった。
その次に、のろのろと丁寧に差し出された小さな両手にももう一個の缶をとって振ってやる。
また望みどおりの透き通ったピンク色のいちご味が出てきた。

「ほら、もう喧嘩なんかするんじゃねえぞ」

それぞれドロップを口に含んで、片側の頬だけ膨れている。そんな頬に、イギリスはキスをしてやった。
涙はすっかり乾いて、泣き顔のあとは跡形もなかった。強いて言うなら少し瞼が赤いくらいだ。

「泣いても良いけれど、でも今度はドロップなしでも泣きやめるようにならなきゃないんだからな」

半ば、独り言に近かった。けれど小さな声だったから、二人の耳には届かない。
けれど、身勝手にもどこかでそれで良いとすらイギリスは思った。
こんなに小さな体、何も背負わなくても良いんだ。
いつも通りアメリカはメロンの、カナダはいちごのドロップ舐めてればそれだけで良い。
少なからずドロップ缶にはメロンといちごしか入っていなくて、二人の好きではないハッカ味もぶどう味もイギリスが全て代わりにに食べてやったのだ。