きっちりとした詰襟の制服を着た配達員が届けたのは、長方形の箱だった。
見た目よりも中身はそれなりの重さがあり、黒地に金色をした英字のロゴがきらきらと輝いていた。
なにより差出人の名がないことに不安感を抱き、眉をひそめながら箱を開けると、そこにはエナメルの靴が横たわっている。
中身について、てっきりもっと物騒なものかと勝手にひとりで想像していたので少し拍子抜けしたような気持ちにすらなった。
オーストリアは箱のなかで光るエナメルの黒を、じっと見つめる。
つけっぱなしのトランジスタラジオが、明日の天気予報を告げていた。どうやら明日は午後から雨になるらしい。
そんな予報から数秒経ち、思い切って靴を手にとってみる。
わずかに3、4センチほどの本当に目立たない細いヒールがついている以外、なんの細工もない靴だった。
人差し指で表面を撫でてみると、指はつるりとエナメルの上をすべった。革や布なんかと違い、防水性に優れている。
左足だけ、そっと靴のほうへ近づけてそろりとつま先から踵へ、一息に引き入れた。
見た目だけではいささか自分には小さすぎるようにも見えたのだが、実際にはそうでもないことに驚く。
圧迫することも、隙間ができることもない靴は皮膚のようにすら感じた。

「まあ、しかし……とんだ贈り物です」

ありがた迷惑だとすら思い、苦笑いしながらオーストリアは再びエナメルを撫でた。
窓辺に置かれた白のトランジスタラジオでは既に天気予報は終わり、広告を読み上げるアナウンサーの声に変わる。
この黒いエナメル靴で水溜りを蹴りながら、靴の差出人の隣を歩く。
そんな明日は、どれだけ楽しかろう。そんなことを思い、オーストリアはひとり胸躍らせた。